REPORT
先輩のSTARTING LINE -第4回-複業で生み出す、日常の幸せ
安藤 耕史さん(合同会社カンパイ日和 代表/サイボウズ株式会社 アシスタントプロダクトマネージャー)
『先輩のSTARTING LINE』は、自分らしい生き方・働き方の実践者たちが、どのようにはじめの一歩を踏み出し、トライ&エラーを重ね、今に至るのかに迫った連載シリーズです。
段階を踏んで、前進してきた“先輩方”のエッセンスが凝縮された内容となっていますので、「いつかやってみたい」を「いまやっている」に変えていきたい、「やりたいことが見つからない、まとまらない」、「やりたいことを本当にやって良いのか?」、そんな疑問に対するヒントを得てもらえたらと思います。
第4回は、合同会社カンパイ日和 代表/サイボウズ株式会社 アシスタントプロダクトマネージャーの安藤 耕史さんの記事となります。ぜひご覧ください。
※本連載シリーズは、TOKYO STARTUP GATEWAYビジネススクール連続講座 「スタトラ」 の中で行われたコンテンツ「先輩訪問」のレポート記事となります。
1つの仕事を死ぬまでやるのはありえないなと思った
―自己紹介をよろしくおねがいします。
安藤耕史と申します。今はサイボウズでプロダクトマネジメントチームのメンバーの一人として働きながら、アンドビールというカレーとビールの店をやっています。会社を作ったのは昨年の1月2月くらいで、店は昨年の8月にオープンしました。お店と会社の仕事の時間としては、現在半々ぐらいでやっています。
―今まさに2つのお仕事を選択してやられていますけど、元々パラレルキャリアをやろうということは考えていたんですか?
いくつかの仕事をして生きていたいと思ったことは無いんですけど、一つの仕事を死ぬまでやるのは絶対ありえないな、というのは就職の時から思っていて。なので決めた仕事に対して四年間それだけやるのに違和感は無かったし、やりたいことじゃなくなったら別のことをやったら良いかなと思っていました。カレー屋は、店を開く前から知り合いのお店のビアバーやフードスペースを借りてカレーを出すのをたまたまやっていたのが理由としてあります。別にこれは複業だ、とかしこまってやっていた訳ではな かったです。
―今のスタイルに行き着くまでのルーツ、原体験等お伺いしてよろしいですか?
僕は今まで転がるように生きてきたところがあって、目の前で楽しそうだな、これしかないなと思ったことをやっていました。当時カレー食べ歩きにはまっていたことがきっかけでスリランカに行って、たまたま知り合いのスリランカの友達の家に1ヶ月滞在しました。カナダでワーホリ中にお金が無くなった時、友達が住んでいるメキシコに行って4ヶ月ほど暮らしたりもしました。スリランカで自分の代名詞になっているカレーに出会った様に、偶然の中に自分の思ってもなかったような出会いとかがあるんで すよね。そうした感じで巻き込まれて切り替わっていく体験を積んでいく内に、就職する時に単純に、何が起きるのかわからないのに今このタイミングで私はこれをやると決めることに意味がない、と考えるようになったんですよ。単純に何か出会いがあって面白いと感じた時に、自分のフットワークを軽くしてそれに取り組んでいきたいなと今でも思っています。
―参加者の皆さん複業に高い関心を持って集まっていらっしゃると思うんですけど、ご自身の複業に対するお考えをお話していた だけますか?
僕は複業やりたかったからやっているというよりも、たまたまその会社の制度等で結果的に現在の状態にあるというのが現状で す。複業複業と最近話題になっているんですけど、複業はあくまで手段であって目的ではないと思います。「いくらお金稼いだら 複業になるのか?」「ボランティアだったら良いのか」のようなラベルには、非常に意味がないなと考えていて。趣味とかお金をもらうとか何だとか関係なく、ただ生きていく中で自分にとって必要なものが満たされていき、それが形によって「複業」と言われたり言われなかったりするのかなと思うんですよね。結局、金銭ややりがいといった自分を取り巻いている複数の要素で構成される満足曲線のようなものが、上手いこと折り合っていれば良いのかな、と思います。
日々の幸せを噛み締めれば 人生は幸福に満ち溢れる気がしている
<以下参加者質疑応答>
Q:趣味を広げて仕事にされた中で、金銭面のリスクヘッジはどうお考えだったのですか?
金銭面はあまりリスクを考えていませんでした。和菓子屋だった実家のじいちゃんの様子を見ていたことが大きかったかもしれません。零細の和菓子屋で忙しく働いて大して稼いではなかったんですけど、やるべきことをきっちりして、街のお客さんにしっかり食べてもらうことを進めたら、子供も大学に行かせることもできていて。そういう様を見ていると、飲食店は事業自体にスケーラビリティもないですし、とんでもなく泥臭く働かざるを得ない業種なのかもしれないけど、ちゃんとやることをやって向上心を持ってやれば食っていけないことはないだろうみたいな、若干のポジティブ精神を持つようになって。もしやばいと思ったら、 二人でやりたくなくても2、3年ボロカスに働いたらなんとかなるんじゃないかなという気持ちで店は始めました。それは今でもそ うです。
Q:最終的にどのようなビジョンを目指しているのでしょうか?
すごい汎用的なんですけど、「持続可能な生活」というワードにすごい共感をするんですよね。欲にまみれて誰が見てるかよく分からない中どこまで行っても満たされない様な生き方よりも、人間の原点として大切な家族との時間や食といった一つ一つの幸せを大事にして噛み締めれば、大層なことをしなくてもちゃんと人生は幸福に満ち溢れたものになるはずであろう、といった根幹が 僕の中にあるような気がします。なので枝葉のところはその時々によって変わってくるので、カレーもその表現の一つでしかない と思うんですよね。お店でカレー屋さんをしてお店の人とお客さんが温かい気持ちになってくれたら、それはさっき言ったような 生活の中での小さな幸せを提供できたかなと。「俺は一人で一億人変えたるわ!」みたいな気持ちがある訳でもないので、自分の できる範囲で周りの人を幸せにすることができたらなと思ってます。
―大きいから良いという訳でもないし、小さいから駄目だという訳でもない。個人にあった活動のサイズ感というのがあるんだろうなと、私自身聞いて思いました。最後に参加者の皆さんにメッセージをお願いします。
最近パラレルキャリアとか色々ありますけど、そういうのってあくまで手段でしかないと思います。まず自分が今やっていること、好きなことを言葉にする等して棚卸しをしていく内に、強迫観念ですごいやらなきゃいけないと思っていたものが、実は大してやらなきゃいけないこともなかったとか発覚する気がします。そうした整理をしてから、本心でやりたいと思うことをどうやったら良いのかなという風に考えると、何か非常に気楽に臨めるんじゃないかなと思います。
―今日はありがとうございました!
皆さん是非お店に来てください!
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[ PROFILE ]
安藤 耕史さん(合同会社カンパイ日和 代表/サイボウズ株式会社 アシスタントプロダクトマネージャー)
1990年岐阜県生まれ。大阪大学人間科学部進学後、在学中は海外の食や文化に興味を持ち、バックパッカーやイ ンターン、研究等で、スリランカやメキシコを中心に20カ国以上に滞在。帰国後はカレー作りに没入して、間借りのカレー屋を開店した。2014年サイボウズに入社。コンサルティング営業職の後にクラウド製品「kintone」のプロダクトマネジメントチームに参画。また就職後も間借りカレー屋を不定期で継続し、2017年には夫婦で理想を実現する為に合同会社カンパイ日和を設立。高円寺にクラフトビールとスパイスカレーの店「アンドビール」をオープン。食と文化を中心に、様々な発見や価値を世の中に提供していきたいと日々試行錯誤している。
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