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REPORT
先輩のSTARTING LINE -第6回- 失敗の天才が作ったYouTuber Academy

齊藤 涼太郎さん(FULMA株式会社 代表取締役)

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『先輩のSTARTING LINE』は、自分らしい生き方・働き方の実践者たちが、どのようにはじめの一歩を踏み出し、トライ&エラーを重ね、今に至るのかに迫った連載シリーズです。

段階を踏んで、前進してきた“先輩方”のエッセンスが凝縮された内容となっていますので、「いつかやってみたい」を「いまやっている」に変えていきたい、「やりたいことが見つからない、まとまらない」、「やりたいことを本当にやって良いのか?」、そんな疑問に対するヒントを得てもらえたらと思います。

第6回は、FULMA株式会社 代表取締役の齊藤 涼太郎さんの記事となります。ぜひご覧ください。

※本連載シリーズは、TOKYO STARTUP GATEWAYビジネススクール連続講座 「スタトラ」 の中で行われたコンテンツ「先輩訪問」のレポート記事となります


重視しているのは 好きなことから学ぶこと

ーまず自己紹介からお願いします。

齊藤涼太郎といいます。FULMA株式会社にてYouTuber Academyを小学生対象に実施しています。サービスを簡単に説明させていただくと、僕らはもともと教育事業者として会社を作った時から子ども達のやりたいことがカタチになったりとか、「できた」「応援してもらえた」という経験自体が価値だと思っていて、YouTubeなのかサッカーかどうかはあまり関係ないと思っています。「子供たちのやりたい!をカタチに」という会社としてのミッションの元に、全て企画は子供達から出すという形でやっています。2016年7月に会社を作って2017年3月にYouTuber Academyをリリースしました。教育プログラムとしてやっているので、再生回数を何回上げますといった話は一切無く、子供たちの学びになるようなカリキュラムを行っていて、ワークショップとスクール、小学校向けのICTリテラシーの講座をしたりしています。ICTリテラシーはすごく大事なのですが、2020年にプログラミングが教育で必修化される中、現場はプログラミングをやらねばとバタバタしていてリテラシーが置いてかれているという現状が実はあるんですよね。尚且つ現代の子供達がネットに触れる年齢がどんどん若年化している社会的背景もあり、小学校の早い時期にリテラシーを学ぶ必要があるので、そこもちゃんとお伝 えしています。

撮影編集、プレゼンテーションを自分たちでやってもらい、人に伝えるってどういうことだろうといった部分をテーマにして講座を一つ一つ作っています。基本的な中身として「企画は子ども達から」というのがあって、子ども達からアンケートを取って何やりたい?というのをすごく聞いていて、そこからコンテンツに落とし込んでいくことが大半です。やらされたことではなく、好きなことから学ぶ大切さを重視しています。

早く起業した方が 失敗しても有利だと思えた

―今の事業をやるに至った原点は何ですか?

僕の場合は高校の時にボランティアをやっていたことが原体験としてあります。サッカーをやりたくて高校に入ったんですけど、すごく勝負にこだわる部活動が面白くなくなっちゃって部活をやめたんですよね。そこから何をやろうかなと考え、子供たち向けに何かやりたいというのはあったので、市内にあった子ども達とキャンプをするボランティア団体に入ったんですよ。けれどそこで子供たち目線が全然足らなくて面白くないと思った僕は、それなら一回自力でやってみようということでボランティア団体を自分で作ったんですよね。子供達がどうやったら楽しんでくれるだろう、と考えながらみんなで一生懸命1つのキャンプを作っていくのがすごく楽しくて。受験もあり引退したんですけども、もしずっとこうしたことが仕事にできたら人生ハッピーだなと高校の時に思っていました。

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―大学に入ってからは当初どんな過ごし方をされていましたか?そういったことを仕事にするために何か活動をされたりしましたか?

それは結構迷ったんですよね。高校の時に作った団体が、ボランティアスピリットアワードというプルデンシャル生命がやっている全国のボランティア活動を表彰する場で、トップを取ったんですよ。「団体を作って一年半で俺日本一のもの作った」みたいな 、天狗状態だった僕は、大学でもそうしたことをやっちゃおうか なと思っていました。ですが進学を機に北海道から東京へ出てきた際、井の中の蛙だったことを思い知るんですよね。多分このまま続けても活動は高校時のレベルにしかならないし、ちょっと働いてみようかなと考え、自然体験などの体験を紹介する事業を行っているベンチャー企業にインターン生として入りました。別にインターンという言葉も知らなかったし、しようと思っていたわけではないのですが、たまたまお話聞かせてくださいと足を運んでみたら、「君バイトよりインターンの方が良さそうだよ」と言われた流れでやることになりましたね。

インターンを通じてはプライドをズタズタにされたというか、会社ってすごいなと思いましたね。エンジニアの人たちがサイトをどう作っているのか、法務の人がいたりとか、営業ってすごい大変じゃん精神やられるわと思ったりとか。自分は新規開拓だったので「はじめまして契約してください」みたいな感じでしたけど、毎日が本当に大変で、これもう無理だろ、みたいにプライドや自信が無くなった感じでした。

―自信が無くなった中、最初の事業をやろうと思った契機は何でしたか?

やはり起業するとなった時に一歩踏み出せたのは、早くやるほうが失敗しても有利だと思えたからですね。今成功している人たちでも、始めの時はどうやれば良いのか分かっていなかったはずだ、最初から全知全能の人なんていないし、自分が30歳になった時にはもっと先へ行けているはずだ、という考え方でした。

YouTuber Academyの基になる 最初の事業の失敗

―最初に創業したのは何をやる会社だったんですか?

「子供達のやりたい!をカタチに」というのは変わらないのですが、子ども達はやりたいことが分からないだろうから色々経験できるほうが良いと思って、体験のセレクトショップをやったんですよね。すでにたくさんある体験をセレクトして月額で体験し放題みたいなサービスができれば、親御さんもたくさん行かせるだろうし、子ども達も経験がいっぱいできるんじゃないかということでやりました。散々でしたけどね(笑)。

MAKERS UNIVERSITYというETIC.さんがやられている大学生向けのプログラム期間中に創業しました。僕の場合ライフイズテック社の水野さんというメンターの方にお世話になっていて。「 何かいけそうじゃん」とすごい軽いんですけど、モヤモヤしている時に上手くいっている方から背中を押してもらい事業をはじめました。次は仲間集めをしたんですけど、これはしんどかったです。ちょっと手伝うよという人はいるんですけれど、本気で事業を一緒にやる人を見つけるのは結構大変で。創業メンバー集めは一回失敗しているんですよね。会社を作る前に一緒にやろうって言っていたんですけど、2週間経った時に俺無理、お前みたいな働き方できないって言われちゃって。自分としては「命かけろよ」み たいなスタンスだったんですよ。大学生だしサークルの延長でしょと思われたくなかったし、本気でやろうよ、時間は全部使おうよくらいの勢いだったので。そんな過程で仲違いになってしまうことがあって。結構しんどかったですね。

それと広告の仕方が分からないことも大変でした。コンテンツも色んな事業者に連絡して協力していただけることになったんですけど、人をどう集めれば良いのか分からなくて。Facebook広告、Webマーケティングもよく分からないので、一番ベタなビラ配りをやりました。純粋なミスによるものなんですけど、1000枚で足りるビラを1万枚刷ってしまったんですね。家中段ボ ールだらけになって、配っても無くならない。その時2人だったメンバーで、お互い500枚程背中に入れて荷物の重みに耐えつつ 、喧嘩もしながらタワーマンション巡ったりして、頑張って7千枚以上配ったんですよね。ですが初回の参加者は0人だったんですよ。

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人は来ないけど準備しちゃったので、リハーサルの意味も込めてスタッフだけで初回をやったんですよね。ドライアイスと水を入れて密封したペットボトルの上に、スーパーボールをたくさん入れた桶を置いて、爆発した時にスーパーボールが綺麗に飛び散る、というのをやろうとしていて。「危ない危ない」「あははは」と僕らが準備をしていたら、急に管理人さんみたいな人が来て、証拠写真を撮られ身分証の提示を要求させられた後、「警察呼ぶぞ、今すぐ出て行け」とその場を追い出されたんですよね。「参加者がいなくてよかったね。いたら会社潰れてるんじゃない」とその時思いました。このように失敗も沢山したけれど、ダメな方法が色々分かったんですよね。賢い人はやる前に気付くんだと思うんですけれど、それが僕の学びでしたね。

ー1つ目の事業の失敗から色々な学びを得てYouTuber Academyの事業に移っていた際、どんな変化を遂げたのですか?

まず集客の難しさを水野さんにお話しした時に、「面白くねえからだよ」と言われて。「本当に良いもの、本当に世の中に必要なものだったら誰かがお金出すし、協力してくれる人も絶対いる」 と指摘されて。それは頭では分かっていて、そう言われてもどうすれば良いのと思っていたんですけれど。その時に別の方からいただいたアドバイスが、「お前はプロダクトアウトが強すぎる。もっとマーケットを見ろ」と言われましたねお客さんが何を欲しいかではなく、自分が売りたいものを全力で売る形を見直すアドバイスに納得した自分は、ちょっと俯瞰してそもそも会社として何をやりたかったのかを見つめ直したんですよね。僕らはそもそも子供たちのやりたい!をカタチにしたかったんだよね、じゃあ今子ども達が一番やりたがっているのに社会が応援できていないものは何だと考えてみて。そこのギャップが一番大きかったのがYouTuberだったんですよ。じゃあこれはやるしかないなと思い、事業として取り組むことにしました。

ー子ども達の気持ちを一番重視した結果、やることになったということですね。

自分のできる範囲でまずはやってみる

<以下参加者質疑応答>

Q:会社の立ち上げの際は全部手作りみたいな感じでしたか?それとも出資とかを募り活動していましたか?

僕らの場合はすごく手作りですね。自由にやりたかったというのもありますけど、そもそもビジネスがあまりよく分からなかったので。まずは自分のできる範囲で小さくても良いからやってみよう!といったスタンスでしたね。上場したい、とか世界を変えたいとか大層なものではなく、幸せになりたいなという思いが自分は強いですね。

Q:企画段階から次のステップに移そうと決めた時に、まず何からやられましたか?

僕らは子どもたちに届けると決めていた訳なのですが、さらにターゲットを絞れと言われた中で届ける対象を具体的に小学生と決めました。起業するというプロセスの中で一番なるほどと思ったのは、料金表を決めろと言われたことです。結局何をいくらで売るんだということさえ決まれば、後はやるだけというか。誰に何をいくらで、2時間のワークショップを小学生対象に5000円で、と決まったらじゃあ後は何やるんだよと考えることになるし、その辺から一気に現実味を帯びた感じですかね。料金表を決めるとなった時に、「5000円で生きていけるの?」みたいなことを具体的に考えることになったので料金表は衝撃的でしたね。

Q:マーケットと自身のやりたいことの掛け合わせをする際、子供からニーズを聞くということと、まず自分が好きなことと掛け合 わせるということと、どちらの意味合いの方が強かったんですか?

当時は気づかなかったんですけれど、確かにニーズの意味合いが強いと思います。僕の場合は「何を」というよりかは「誰に」というのが強くて。なので例えば子ども達がサッカー教室をやりたい、というのがあれば今もやれるんだったらやりたいです。結局「 子供達に届ける」というのが先で、そこさえぶれなければ自分は良いかなと。彼らがやりたいと言っているのにできてないものを最初に選びました。

Q: YouTuberをアカデミーにして事業にした時、どのように人を集められたのですか?

僕らでいえば集客等のノウハウを持つ企業さんと最初に手を組めたのがすごい強かったです。組みたいと思うパートナー、アカデミーに来たいと考えてくれる方が、最初に失敗した事業と比べても多かったのは、集客の仕方とかではなくコンテンツ自体が強いからだ、というのは最近すごい感じています。YouTuber Academyで良かった、救われたなと思いますね。

―最後に参加者の皆さんへメッセージ、エールをお願いします。

僕も偉そうに言える立場ではないので自分も頑張らなくちゃ、と思いました。みんなで頑張りましょう。

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[ PROFILE ]

齊藤 涼太郎さん(FULMA株式会社 代表取締役)

1996年、北海道生まれ。慶應義塾大学在学。大学1年時にベンチャーで営業インターンを経験。3度のMVPと会社受注件数ギネス記録を達成。2016年に「子どもたちのやりたい!をカタチに」をミッションに掲げ FULMA株式会社を創業し、代表取締役に就任。2017年に日本初の”YouTuberになる”から学べる小学生向け教育プログラムYouTuber Academyをリリース。Twitterのトレンドや三大子ども新聞、WBSなど1年で20以 上のメディアに取り上げられる。ビジョン策定、新規開拓、事業拡大戦略まで経営全般の責任を負う。ネットで叩かれながらも子どもたちの純粋な好き!やってみたい!という想いを応援するため、日々奮闘中!

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