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REPORT
先輩のSTARTING LINE -第9回- 経営者のママが目指す人生を“自分ごと”にするライフデザイン

杉本 綾弓さん(株式会社meguri 代表取締役)

杉山さん

『先輩のSTARTING LINE』は、自分らしい生き方・働き方の実践者たちが、どのようにはじめの一歩を踏み出し、トライ&エラーを重ね、今に至るのかに迫った連載シリーズです。

段階を踏んで、前進してきた“先輩方”のエッセンスが凝縮された内容となっていますので、「いつかやってみたい」を「いまやっている」に変えていきたい、「やりたいことが見つからない、まとまらない」、「やりたいことを本当にやって良いのか?」、そんな疑問に対するヒントを得てもらえたらと思います。

第10回は、株式会社meguri 代表取締役の、杉本 綾弓さんの記事となります。ぜひご覧ください。

※本連載シリーズは、TOKYO STARTUP GATEWAYビジネススクール連続講座 「スタトラ」 の中で行われたコンテンツ「先輩訪問」のレポート記事となります。


 

自分の人生を自分でデザインする人を増やしたい

まず会社概要の説明をする前に、私という個人がどういうミッションやビジョンを持っているかというところからお話しますね 。なぜ会社概要から先に話さないかというと、会社は個人のミッションやビジョンを達成するためのツールであり、会社というものと自分のミッションやビジョンはそもそも別のものだと思っています。それなので私が個人としてやっていきたいことは何なのか、というところから話した方がスムーズにことが進むので、そこをまずお伝えしようかなと思っています。私は自分の人生をデザインして創造していく人達を増やしていきたいです。会社としてこうあるべきだから、「誰かがこう言った」ではなく、「間違っているかもしれないけれどこれにしてみよう」と、自分の人生に対して意思を持って決断していくことが、人生を“自分ごと”にしていく上で重要なことだと思っています。自分で仮説を立てて、設計をして、作り上げてみる。その先に自分が思ったものが出来なくても、またそれに近づけてみる。トライ&エラーでも自分の意思でチャレンジしていくことが自分の人生に肯定感を持ち、幸せに生きることにつながっているのではないでしょうか。

実際にどんなことをしている会社なのかを説明しますね。会社は「人間らしく豊かな社会を、次世代へ」を合言葉に、ライフデザインカンパニーと名乗っています。 クライアントは、衣食住や医療・福祉・教育・エネルギーというような生活のインフラ化するようなビジネスであること、そしてその中でも、子どたちの未来に対してどういう価値を残していきたいのかという考えや想いに共感できるところだけとパートナーとして組ませていただいています。

業務内容は具体的には、暮らすをつくる事業として、主にコンサルティングとバックオフィスのアウトソーシングをしています。コンサルティングは、業務フロー策定・作成・運用、業務マニュアル策定・作成・運用。バックオフィスは、経理、労務、総務、事務局、広報をしています。

働くをつくる事業として、東京都から受託をしてイッサイガッサイという創業支援の事務局をさせていただいたり、創業スクールの講師や講座設計をしています。 自分の人生を自分でデザインするって、自分で意志を持ち選択するだけではなく、想いと理論が両方ないと実現できないと思うんですね。その両輪で、お金が生み出されて継続可能に生きることや事業が成り立ってくるので、多くの人たちに自分の想いを形にしていけるスキルや理論というのを持ってほしい、知ってほしいなと思っています。

これからの話で言うとシェアオフィスや保育園の運営をしたいなと考えています。例えば、シェアオフィスで言うと、1階にカフェなどの飲食店、2階にシェアオフィスというのをやろうかな、と。“暮らす”と“働く”の距離があまりにも離れてしまっていて 、私はできるだけ“暮らす”と“働く”をより密接にして、暮らしやすく働きやすい環境というのを作っていきたいと思っているんですね。「仕事だから我慢しなければいけない」ではなく、仕事も自分の暮らしの延長な訳でして。生きるという軸で考えたら24時間も自分の時間なので、この二つをより繋げたいと考えていますね。

会社の内部の話、人材育成面では、どこに行っても通用する人材育成をしたいと考えています。想いと理論の話の部分でもありましたが、そのスタッフが本当にやりたいことが出てきた時に、 それを実現できるスキルや環境、仲間をつくれるようにと考えています。「どう生きたいの?」「それを達成するために、今は何が必要?」といった問いかけを大切にしています。自分の人生をデザインできる人たちを社内から増やしていきたいですね。それと多様性のある働き方を実現したいとも思っています。今までが週5フルコミットが普通の働き方だったのかもしれないですけど、これから介護であったり、主婦の方、外国人の方が増えていくように、いわゆる一般的な働き方はどんどん変化していくはずだと思っているので、時間制限があってもチームで成果を出すこれからのフツウの働き方をデザインしていきたいと考えています。

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30歳までに約20種の仕事をした理由

―人生を自分でデザインできる人を増やしたいとおっしゃっていましたが、そういった思いはいつ頃から芽生えたでしょうか?

ポイントとしてはいくつかあるのですが、まず最初に母親の教育方針として、主体性を私に求めた、というのが大きいですね。 「明日私が死んでしまっても心残りが無いように、私はあなたに 生きる力を教えている」という母の元で、物事を選択する行為に自分で意思を持たせる様に幼少期から育てられました。なので勉強しなさいと言われたことも一度もないですし、逆に宿題でイライラしていると「やりたくなければやらないで良いんじゃないの ?」と言われたこともあります。普通のものが嫌で黒い横型のラ ンドセルを選び、耳にはピアスの穴があり、髪の毛はパーマをかけてある。そんな小学校1年生だった私は、教員によく呼び出さ れたりしていたんですけど、常に母は「うちは精神的な教育をし ていますから」と主張し、批判も突っぱねていましたね。子供ながらに、そうした姿に憧れは抱いていたと思います。

―その時からご自身の人生を自分でデザインされる意思を持つようになったと思うのですが、個人から社会に視野を広げるようになった契機はいつだったのですか?

2個目のターニングポイントになるのですが、小学校1年生の時に両親が離婚をして、母が体調を崩してしまったんですよ。そこからなかなか働けない状況が続きまして、私が小学校3年の頃か ら生活保護を受けるようになったんですね。自分自身が稼ぎたかったし、生活面でもお金を稼がなきゃなと思って16歳の時にアル バイトを始めたんですよね。そうしたら想像以上に働くことにハマって。自分で考えて行動することが評価をされる環境に初めて身を置いて、働くという楽しさを知りましたね。最初はブックオフで働いていたんですけど、当時ETIC.がブックオフと進めていた 学生起業家の輩出を目指した活動があって、私は採用やマネジメ ントをやらせていただいたんですよね。その中で自分の力で稼いでい くことを知ったりとか、経営のノウハウを全部10代の時に教えてもらって人生の選択肢がすごく広がった、というのが自分が初めて社会に出たというところにおいて視野が広がった瞬間だったと思いますね。

―原体験からのファーストステップはいつ頃の出来事になるんでしょうか?

やっぱり私の中では最初の会社ですね。そこでETIC.にいる創業者の方々と16歳ぐらいの時に出会っていますし、当時ブックオフ(現、俺のフレンチ東京)の社長だった坂本さんが、京セラの稲盛さんの影響を受けていらして、アメーバー経営でした。会社は何のためにあってどういうステップを踏めば利益をとれて、どうすれば人は育成されるのかというノウハウを、全てのスタッフにトレーニングしてくれる仕組みだったんですよ。先輩から「孫子の教えを読め」みたいな日々を10代後半で過ごし、そこである程度体系的なビジネスを知れたというのが、ファーストステップとしてありますね。

それからは10年ぐらい約20種類の仕事を30歳になるまでしていました。その中で、経営理念が全然達成されていない会社、人が大切にされないで駒になっている様子、会社のビジョンとミッシ ョンが第一目標で個人のミッションとビジョンがあまりクロスされていない現場をたくさん見たんですよね。そこから今の思いが芽生えてきたので、約10年間いろんな企業見てきたというのがあると思います。

―そのようにして生まれた「自分の人生を自分でデザインする人を増やす」といったビジョンの実現へ向けた行動で、最初に試してみたことは何ですか?

マイプロとかそういうのは自分でやってはいましたね。26歳ぐらいから、メディアをやったりカフェを運営してみたりして、とにかく外に発信するということを試してみました。それと女性の ためのイベントを26歳から約3年間、個人として運営の企画のメインに入ってやらせて頂きました。協賛を頂いたり、後援をいただくためにプレゼンをしに行ったり、それこそたくさんの先輩方と出会い、すごく可愛がってくださったりもしました。まずは動く、でした。

ーそうした発信から色々な繋がりが生まれた、ということですか ? そうですね。志ある先輩方は、とにかく動いている人、熱量がある人が好きなので、スキルも何も無いけど、とにかく熱く語って動いた結果、応援して下さる方が増えてきたというのはすごくあるなと思っています。

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妊娠を機に起業

―過去のインタビューを拝見したんですけど、妊娠がきっかけでその会社の設立を考えたというお話にすごく驚きまして。普通だと妊娠された際に、起業するという思い切った決断は出来ないと 思うんですけど、どのような経緯でそのようなお考えになったのですか?

まず前提として起業しようと10代で思っていたんですよ。自分が社会に適応できなさそうという予測が立っていたので。まず20代は起業することを前提として、自分への投資を目的として色々 な企業に行こうというのは決めていました。とはいえ30歳を目前にした時に、私は何で稼げるんだろうとちょっと不安にはなって。そんな中先輩の起業家にお話をしたら、「あなたは生意気だから自分でやるしかないんじゃない?」と言われて。人の会社に納得できない場合は、「嫌だな」という思いしか出てこない。ただ、 「嫌だな」と言っていても環境は変わらないので、じゃあ自分でやってみようとなったんですよね。最初はフリーランスになりましたが、フリーランスになって棚卸をしてみると、思ったより16~ 29歳まで働いてきたのは無駄ではなくて、それなりにスキルや実 績がついていたことに気づいたんですよ。

それと妊娠して、これまで以上にチーム戦で働いていかないといけないという実感が湧いたのも大きいですね。フリーで仕事をしていたら、自分が倒れたり、子どもが風邪を引いたら打え替えがきかない。リスクを取るというよりは、むしろそのままであるこ との方がリスクだと思い、会社にしました。それから、35歳の自分を想像した時に、「フリーランス経験あります」と「会社を経営していました」だと、明らかに後者の方が市場価値があるんですよね。なので起業して仮に会社がうまくいかないとしても、頑張 って成果を出していたらその後それなりのポジションで就職ができると考えました。5年後の自分の姿と比べて、自分にとって望ましい決断をしました。

八方美人を避けるビジネスを

<以下参加者質疑応答>

Q:そもそも選択肢を知らない層に、どのようにして選択肢があることをお伝えしようと思われているかを知りたいです。選択肢を知った後にも動き出せない層に、どうアプローチをしているかも気になります。

必ずしも選択肢がたくさんあることがハッピーだとは限らないですよね。選択肢がありすぎて、「何を選択すれば良いんだろう?」と困っている大学生もたくさん見てきているので。選択肢が 多いか少ないかというよりは、自分が今生きているということに肯定感を持てるかどうかが、私は重要だと思っているので。選択肢を広げようとはあまりしていない、という前提があります。あともう1つは自分が事業や活動をしていく上で、ある程度アプロー チする層や領域を絞っていかないと、ビジネスとしても生き残れないし結局八方美人で終わってしまうんですよね。限られた人生の中で私たちの元に来てくれた人たちの熱量を上げていくことにフォーカスをしていますね。その代わりディープに関わるというスタンスです。

もちろんすべての人に可能性がありますが、そのタイミングで変化が訪れるとは限らない。私が持っている知識等はお伝えするけど、やるかやらないかは最終的にその人次第ですからね。なぜかというと、それすら本人の選択なので、別に私の思いがそこに100%反映しなくて良いかなと思ってます。たくさんの人に伝えるには?という観点でいくと、世の中にはインフルエンサー的な活動をされている方もいるので、経営者や事業家として活動をするのではなく、別のスタイルで、そういった活動をするのもありかなと思いますので、ご自身にとってどのような形がフィットするのか考えてみるといいかなと思います。

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誰でも自分の人生のオーナーシップを取っていける

Q:何かの転機でご自身が決断される際、大事にしていらっしゃる基準はありますか?

普段私はですね、右脳で判断して左脳で言語化するということをしていますね。ジャッジは最終的に直感だなと思っています。嫌なものは嫌だし、好きなものは好きだと思うので。自分の興味が本当にどこにあるのか、他人からの評価ではなく自分は率直に何がしたいのか、本当の自分はどこなのかを考えるようにはしています。その後にいくらでも左脳的に考えれば、後からどうにかなるかなとは思うので、とにかくまずは目指すべきところ、自分の興味範疇を率直に見ることですかね。

あと最近は、自分がこれ以上成長しないなと思った時は、過去の経験が通じないところに赴き、自分の中で完成している型を一度崩すようにしています。ちょうど3週間前に「WSLabWomen’s Global Leadership Program」というアントレプレナー研修をシリコンバレーで受けていたんですけど、研修も全て私が得意ではない英語で行われたんですよね。今までの過去の経験が絶対的に通用 しないという場で、「自分がどういう状況になるのか?」「本当に自分は何をやりたいのか?」「自分が誇れることは何なのか?」が、そういった場では分かったりするので、あえてそういう環境に足を運ぶんでみると、自分自身を見やすくなるのかなと思います。

Q:ミッションビジョンをアクションに結びつけるプロセスにかな り苦労しているのですが、棚卸しの詳しい工程を知りたいです。

聞いたことあるかもしれないですけど、私はwill,can,mustで物事を捉えるようにしています。自分がどういう願いや理想を持ち、それを達成するためには自分が何をしなきゃいけないか、自分 が何を出来るのかをまず書き出す。あとは近しい人10人にまずインタビューしてみるのも良いですね。そうした行為を通じた客観性と主観性の行き来が、市場価値や自分を見るのにもすごく重 要だと思うんですよ。自分が主観的に重要だと思っていること、 好きだと思っていることが他の人から見ればそうでもないかもしれないし、逆もまた然りなので。まず自分で洗い出した後に人にも聞いてみることが、他の経営者の方からも 結構聞いて実践してみたことですかね。あとはとにかくやり始めることが大事だと思います。

Q:事業をやり始める際に、メンバーとなる方とのコミュ ニケーションをしていく上で何かアドバイスをしていただければと思います。

やはりミッションとビジョンをよく語るということに尽きると思います。双方において重なる円をどれだけ持てるか。同じ人間ではないので全部は無理なんですが、 「特定の部分で合致しているから我々は今一緒にやって いるんだよね」という共通認識を持つのは大事だと思います。なので円が重ならない部分に関しては何も言わない。夫婦と同じだと思うんですけど、合致する所は協力し合う。あとは事業の範疇だけでのコミュニケーションではなく、お互いの人生のキャリアプランも話し合っておくと、離れるタイミングも分かりやすいと思います。 いつか離れるということを想定できるのであれば、あらかじめ終止符を打つことが予測できるので、離れる時も 裏切られたという感覚にはならずに、「人生それぞれだからね」という感じでより良い関係性を継続して構築できると思いますね。

―最後に皆さんへメッセージ、エールをお願いします。

人が生きていく中でフリーランスであろうと起業家であろうと、それはアウトプットの形にしか過ぎないので 、「これでなければいけない」というのは無いと思ってい ます。そこの形態にとらわれることなく、一番大事なのは自分がしたいと思ったところを形にしていくことなので。例えば上手くいけば、それがマイプロから法人化するかもしれないし、それって後からついてくるものなので。専業主婦であろうと企業勤めであろうと起業家であろうと、どんな人でも自分自身の人生のオーナーシップをとっていくことができる。自分が主観的に自分の選択肢に納得してやっていける方向へ向けて、一歩一歩進めていければ良いのかなと思っております。

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[ PROFILE ]

杉本 綾弓さん(株式会社meguri 代表取締役)

16歳より小売業で採用・新店立上げ・店舗マネジメントを行う。その後、百貨店のテナントでチーフとなり、予算・前年比割れが一度もなく、次々と売上不振店を立直す。10年の販売職を経てIT業界に転職。物販審査管理部門の立上げ、地域に焦点を当てたマーケティング・プロモーションなどに従事。オフライン・オンラインでのセールス経験を活かし、中小企業向けコンサルティングを中心とした事業展開で2014年独立。また、病・出産をきっかけに、サステナブルな働き方・手触り感のある暮らし方に価値を置くようになる。1児の母。

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