【中編】「周りと同じことをするな」に育てられて 迷いながらも進み続ける今
今井善太郎さん
2024ファイナリスト 最優秀賞/株式会社Classroom Adventure 代表
#TSG2024#男性#20代前半#大学生#学び革命#法人登記前/事業を既にスタートPosted Date : 2026.01.28

【中編】
「周りと同じことをするな」に育てられて
迷いながらも進み続ける今
◀︎【前編】教育を“ゲーム”で変える挑戦 大学4年生CEOの原点とこれから
鈴木: 次のフリップに行きましょうか。次は、「起業をもう諦めよう、やめようと思った瞬間があるかどうか」を◯か×で答えていただきたいです。
今井さん: (フリップに「×」)…ないですね。
鈴木: 「起業をやめよう」と思ったことはない。
今井さん: はい。そもそも「起業している状態」と「起業していない状態」を、あまりはっきり分けていないからだと思います。僕の中では、人生はもっと連続的なもので、「何をどれくらいやりたいか」「何をやりたくないか」の度合いの問題に近い感覚です。
最初から「起業したい」と思ってこの活動を始めたわけでもありませんし、「起業」という状態を、「会社を設立している状態」だけで区切るなら、それは契約がいっぱい必要になって、自分の名字でハンコを押すのが怖くなったので、「会社のハンコにした」くらいの感覚でもあります。
「これがうまくいってないな」と思ったとしても、人生では他のことをやり続けるだろうな、という感覚があるので、「起業そのものをやめたい」とは思わないですね。もちろん、「このプロダクトはやめたい」とか、「この仕事はやめたい」というのは何度もありました。

鈴木: 学生のうちに起業する、というところで、自分の中で心のハードルはあまりなかったんですか?
今井さん: ハードルはありました。Googleに就職したいとか、「めっちゃいい会社に就職したい」と思っていた時期もありました。でもよく考えたら、実家は花屋なんです。
親父も脱サラして花屋になって、今の自由な生活を手に入れた人で。花屋は大変そうで、朝4時くらいに市場に行かなきゃいけないので、毎朝4時に起きて、夜も遅くまで働いています。それでも楽しそうなんですよね。
それを見ていて、「自分でやれていることの喜びとか幸せ」はすごく感じるようになりました。今はあまり心配はしていないですし、学生は本当に最高で、みんな応援してくれるし、大きな責任もそこまで求められないので、いいなと思っています。
鈴木: ということは、起業に対してそんなにマイナスなイメージはない?
今井さん: 全然ないですね。お金を稼ぐのは思っていた以上に難しいな、とは感じていますが、それ以外は「やりたいことをやれている」という感覚が強くて、楽しいです。
鈴木: 起業してみて、「理想とのギャップ」を感じることはありましたか?
今井さん: いい意味でのギャップとしては、「思った以上にいろんな人が応援してくれる」ということです。
こういうことをやっている、と話すと、意外とみんな「応援してるよ」と言ってくれる。正直、「イケすかないやつだな」と思われるかもしれない、とか、「どう思われるかな」と考えて、友達には誰にも発信していなかったし、インスタにも載せていませんでした。でもいざ「こういうことやってます」と伝えてみると、応援してくれる人が多かった。
家族も、おじいちゃんには「大学だけは卒業してくれ」とすごく言われていますが、それ以外は、新聞に載るとその新聞を買って冷蔵庫に貼ってくれたりして、「嬉しいな」と思います。
鈴木: 周りから言われた支えになった一言や、支えになった出来事があれば教えてください。
今井さん: 親父の存在が大きいです。親父にはずっと「周りと同じことするな」と言われてきました。
大学に行きたいと言うと、「大学に行きたいから行くならいいけど、みんなが行くから行く、みたいな感じなら行かなくていい」と言われました。就職したいと言うと、「本当にしたいのか?」と必ず問われました。
「レールに乗る」「なんとなくで進路を決める」ということを、ずっと否定され続けてきた感覚があります。そのおかげで、「本当に自分はやりたいのか」「本当に続けたいのか」「本当にやめたいのか」を考えるクセがつきました。
もう一つは、「一度始めたら簡単にやめるな」ともよく言われてきました。
僕は幼稚園の年中から中学校まで、ずっとバスケ部に所属していたんですが、実は一度もバスケを好きになれなかったんです。毎週「本当に嫌だ、やめたい」と思っていました。
でも、家の雰囲気として、親父が「やめていいよ」と言うタイプではなく、むしろ「簡単にやめるな」という空気がずっとあって、なかなか「やめたい」と言い出せなかった。だからこそ、「どうにか楽しくするにはどうしたらいいか」と工夫したり、その環境で踏ん張るクセが自然と身についたと思います。
一方で、親父自身はすぐ新しいことを始めて、すぐやめるタイプなんですよ(笑)。「ギター始めるわ」と言って、2ヶ月後にはもうやっていなかったり。でも僕は、そういう親父を見つつ、「やめるならやめるで、自分なりの覚悟を持ってやめよう」と思うようになりました。続けることに関しても、ずっと大事にしていきたいスタンスです。
鈴木: 今やられている事業を始めた時、お父様の反応はどうでしたか?
今井さん: 「頑張んなよ」という感じでした。特に反対されたことはないです。そもそも何かに対して強く反対されたこと自体が、あまりないですね。
鈴木: 学生で起業されている方って、まだ周りに少ないと思うんですが、友達の反応はどうですか?
今井さん: 正直、あまり気にしていません。ただ、自分で言うのも変ですが、「ああ、今井ならそういうことやるよね」と思われている気はします。いい意味でも悪い意味でも、「ああ、前からそういうタイプだよね」というような。
子どもの頃から「人と同じことをするな」と言われてきたので、「わざと違うことをやっているところあるよね」と見られていたかもしれません。
一方で、同世代の友達が新卒2年目くらいになって、「仕事つらい」と感じ始める時期に、インスタのストーリーで「花金(ハナキン)最高!」みたいな投稿をよく見るようになりました。
その一方で、僕はアメリカ人のメンバーのノアと、渋谷のシェアオフィスで夜11時くらいまで仕事をしていて、ちょっとやるせなくなったんです。「俺もハナキンしたい!」と思って、ノアに「ハナキンってどこでやるんだろう?」と聞いて、「人が一番いそうなのは歌舞伎町だろう」という話になって(笑)、二人で歌舞伎町に行きました。
キャッチのお兄さんに話しかけられながら、「知らない店は怖いから」と言って、結局『串カツ田中』に入りました。その日は1月か2月くらいで、すごく寒くて、僕とノアは一番端っこの席に座っていました。周りはサラリーマンやカップルばかりで、僕たちはあまり会話もなく、周りの話をずっと聞いていました。「いいなあ」と思いながら。
窓際の席だったので、ふと外を見ると、雪がふわっと舞っているように見えて、「雪だ」と二人で話しながら、ちょっとしんみりしていたんです。でも、よく見たらそれは外でタバコを吸っている人の灰で(笑)。その瞬間、「今の仕事、やめたいな…」と一番虚しくなりました。
でも、そういう経験も含めて、「かっこいい会社」「きれいなオフィスで働く」とか、そういうことへの憧れは今もどこかにありますし、そのギャップを楽しんでいるところもあります。

鈴木: ノアさんを含め、周りと一緒にやるからこその大変さもあると思いますが、その点で意識して努力していることはありますか?
今井さん: 僕は性格的にテンションの浮き沈みが激しくて、すごくやる気がある時と、不安になって落ち込む時の振れ幅がかなり大きいんです。
代表として生きていると、いろんな人からアドバイスをもらう機会が多くて、例えばTSGのような場所に行くと、「よし、頑張るぞ!」と気持ちが一気に上がります。その勢いのままチームに共有すると、メンバーから見ると「急に新しいことを言い出した人」にもなり得ます。
メンバーは日々の開発や運営に集中してくれているので、僕のようにセミナーやイベントに行って、外から刺激を受ける機会が多いわけではありません。だから、「急にわけのわからないことを言い出した」と感じさせないように、できるだけ気をつけています。
逆に、僕が不安になって「もうこの会社に未来ないかも」と思ってしまう時も、オフィスに戻ると、みんなが黙々と作業しているんですよね。それを見ると「いや、ちゃんと進んでるじゃん」と思い直せる。そっちのパターンの方が、実際は多いかもしれません。
僕の中では不安や妄想がぐるぐるしていても、オフィスに行くと、現場では地道にプロダクトが積み上がっている。「このまま頑張ればいいんだな」と思わせてもらうことが多いです。
方向性については、「とりあえず今井が言うなら、信じて一緒に進もう」と思ってくれているメンバーが多いと感じるからこそ、僕の感情の振れ幅が大きすぎて「何考えているのかわからない」とならないように、なるべく意識しています。
鈴木: 「今井さんがやりたいから、みんなを説得して進めたこと」はありますか?
今井さん: あります。「これは社長命令だ」と言って、急に「このプロダクトの開発やめよう」と伝えたこともあります。ただ、それが多くなりすぎないように気をつけていますし、「社長命令だ」と言っても、たまにスルーされていることもあります(笑)。
今井善太郎さん
2024ファイナリスト 最優秀賞/株式会社Classroom Adventure 代表
慶應義塾大学総合政策学部。中学卒業後カナダにわたり19歳まで過ごす。現地小学校でのインターンを通じ教育に興味を持ち、2023年に大学の研究室の仲間とClassroom Adventureを立ち上げる。




