【後編】5人で世界をつくる 本で育った学生起業家の仲間と描く次の物語
今井善太郎さん
2024ファイナリスト 最優秀賞/株式会社Classroom Adventure 代表
#TSG2024#男性#20代前半#大学生#学び革命#法人登記前/事業を既にスタートPosted Date : 2026.01.30

【後編】
5人で世界をつくる
本で育った学生起業家の仲間と描く次の物語
◀︎【中編】「周りと同じことをするな」に育てられて 迷いながらも進み続ける今
鈴木: 今井さんは学業もありますが、今は起業と学生生活、どれくらいの割合ですか?
今井さん: 会社の比重が9割〜9.5割くらいで、残りが大学生活という感じです。
鈴木: 昔からずっとそのくらいの比率だったんですか?
今井さん: いえ、1〜2年生の頃は、大学にかなり力を入れていました。GPAが3.89か3.98くらいで、絶対主席レベルの成績でした。全部SかAで、Bを取った時は先生の研究室に行って、「なんでBなんですか」と聞きに行ってドン引きされたこともあります(笑)。
今振り返ると、当時は明確な目標がなかったので、「とりあえず目の前のものを全力でやる」という感じで、大学の勉強をかなり頑張っていました。
授業と起業の両立については、今は授業に出て、そのまま学内のカフェで打ち合わせをする、というルーティンが多いです。この前も授業に出たら、「TSG出てましたよね?」と声をかけられました。「僕も出たいと思ってるんです」と言ってくれて、すごくいい出会いだなと思いました。
鈴木: 学業と起業の両立で、苦労したことはありますか?
今井さん: 最初は3人で会社を始めて、3人とも大学の友達でした。できるだけ同じ授業を取るようにして、誰かが休んでもノートや内容を共有できるようにしていました。3人並んで授業を受けて、その横で仕事もしながら話を進める、という感じでやっていました。
鈴木: 事業に集中したいときの、自分なりのルーティンはありますか?
今井さん: 集中したい時は、カフェに行きます。雑音がある方が逆に集中できるタイプで、「周りから見られている」という感覚があると頑張れるんです。
会社にいる時、僕の席は後ろに誰もいなくて、僕からはみんなが見える配置になっているので、僕がサボっていても誰にもバレないんですよ(笑)。なので、「これはまずい、ちゃんと集中しないと」と思う時、例えば原稿を書かないといけない時や、資料を急いで仕上げる時などは、あえてカフェに行って「全員に見られている」環境を作るようにしています。
鈴木: 続いて、「支えになった本」を教えていただきたいです。
今井さん: 本を持ってきたかったんですが、完全に忘れてしまって…。本当に本が大好きで、今はそこまで読んでいないですが、子どもの頃はずっと本ばかり読んでいました。
ゲーム会社をやっているのに、家ではゲーム禁止だったんです。テレビも家にありませんでした。なので読むものが本しかなかったんです。
ビジネス書でいうと、ピーター・ティールの『ZERO to ONE』はよく「起業家の必読書」みたいに言われる本で、読んでいました。「競争するな、独占しろ」といったメッセージが強い本です。ピーター・ティール本人は、ちょっとサイコパスっぽいなと感じるところもあって、ああいうふうにはなれないなと思いつつも、発想としてはすごく面白いです。
小説でいうと、ジョン・スタインベックというカリフォルニア出身の作家がいて、ノーベル文学賞も受賞しています。『怒りの葡萄』が有名ですが、僕が一番好きなのは『ハツカネズミと人間(Of Mice and Men)』です。とても短い作品ですが、カリフォルニアの貧しかった時代の農夫たちの話で、すごく悲しい物語です。

これは初めて英語で最初から最後まで読んだ本で、現地の学校の英語の授業で「これ読んだ方がいいよ」と渡されて読みました。直接自分の人生に何かを教訓として与えた、というよりも、「こんなに短くて、こんなに心に残る物語があるんだ」と衝撃を受けた作品です。日本語でも英語でも、何度も読み返しています。
内容としては、ジョージとレニーという二人の男の話です。レニーは力加減がわからず、ペットのネズミを握りつぶしてしまうようなどんくさい男。一方でジョージは仕事ができて周りにも好かれるタイプです。この二人はすごく仲が良いんですが、とても貧しい生活をしています。
二人には「いつか小さな家を持って、牛やウサギを飼って暮らす」という夢があって、レニーはその夢の話を聞くのが大好きなんです。でも、歴史的背景を知っている読者には、それが絶対に叶わない夢だとわかっている。そのギャップが切なくて、最後は本当に救いがないくらい悲しい終わり方をします。
それでも、彼らが夢を語り続ける姿が印象的で、「夢を持つこと」と「時代がそれを許さないこと」の切なさみたいなものを感じさせられる作品です。
今井さん: もう一冊は、テッド・チャンというSF作家の『息吹』という短編集です。テッド・チャンは15〜20年に一度くらいしか本を出さない寡作な作家ですが、『あなたの人生の物語』などが有名で、オバマ大統領も絶賛しているくらい評価されています。
表題作の「息吹」は、ロボットのような存在が主人公の物語で、「人間とは何か」「自己とは何か」という問いを突き詰めていく話です。作中では、「頭の上に常にひらひらと舞っている木片のようなもの」が思考そのものを表していて、風が止んでそれが落ちると、その存在は死んでしまう。脳という器ではなく、その中の電気信号のパターンこそが「その人」なのではないか、という考え方が出てきます。
AIや医療が発展して、「脳だけ保存する」「臓器を全部入れ替える」みたいな時代になった時に、「どこまでがその人本人なのか」という問いを、物語として見せてくれる。これは読んだ人にしか伝わらないところもあるので、コンピューターサイエンスが好きな人やSF好きにはぜひ読んでほしい作品です。
ただ、女友達にすすめたら「まったく意味がわからなかった」と言われて(笑)、「そうだよな」と思いました。うまく説明できている自信はないですが、「人とは何か」を考えたい人には、とても刺さると思います。

今井さん: あとは、岡本太郎が一番好きな人かもしれません。『自分の中に毒を持て』という本が特に好きで、支えになっています。
とてもシンプルで強い言葉が多くて、「選択肢があったら、辛いほうを選べ」と書いてあったりします。それを一応意識するようにしています。できているかどうかは怪しいですが(笑)。たとえば「まずそうなドリンク」と「美味しそうなドリンク」があったら、まずそうな方を選ぶようにしてみたり。
鈴木:ありがとうございます。最後の質問になります。「これからの挑戦を一言で表すと?」というテーマでフリップを書いていただきたいです。
今井さん: 今考えている言葉は「5人で世界へ」です。

今井さん: うちのチームは今、メンバーが5人なんですが、スタートアップというと、成長するにはどんどん人を増やしていかなきゃいけない、というイメージが強いと思います。でも、今は技術が本当に発展していて、AIなどを使うと一人ひとりのポテンシャルを何倍にも、何十倍にもできる時代になっていると感じています。
1年前と比べると、自分の生産性は本当に何倍にもなった実感があります。だからこそ、「人をただ増やしていく」というより、「超濃い5人」をAIなどの技術で増幅させて、5人で行けるところまで行ってみたい、という感覚があります。
今、5人では考えられないくらいの仕事量を、とにかく取りに行っているところです。まだ一つも納品していない案件もあるので、できるかどうかはわかりませんが(笑)、まずは「この人数で最大のインパクトを出す」ということにチャレンジしたい。新しい「会社の形」を試してみたいと思っています。
鈴木: 素晴らしいです。ありがとうございます。では、これを見ている「挑戦しようとしている人たち」に向けて、最後にメッセージをお願いします。
今井さん: 本当に今は、「挑戦することが世界一簡単になっている時代」だと思っています。
1つは技術面です。生成AIの登場で、プログラミングができなかった人でもアプリを作れるようになっているし、「絵が描けない」と思っていた人でも、絵を生み出せる時代になっています。
もう1つは支援の仕組みです。TSGのように、最初は400字のエントリーから始まって、最大300万円の支援が受けられるような制度がある。昔だったらありえないようなことが、今は当たり前のように起きている。
僕は東京で起業していますが、「東京都が本気でスタートアップを増やそうとしている」というのを、肌で感じます。挑戦を支える体制が、ものすごく整ってきていると思います。
だから、「挑戦する理由を探す」よりも、「挑戦しない理由を探す方が難しい」くらいの時代になっていると感じています。日本は課題もたくさんありますが、まだまだ元気のある国でもあります。その課題を一個ずつ解決していく中で、誰でも挑戦できると思っています。
鈴木: ありがとうございました。内容が濃くて、お聞きしていて楽しかったです。
今井さん: こちらこそありがとうございます。おすすめした本が、もし一冊でも刺さったら嬉しいです。
今井善太郎さん
2024ファイナリスト 最優秀賞/株式会社Classroom Adventure 代表
慶應義塾大学総合政策学部。中学卒業後カナダにわたり19歳まで過ごす。現地小学校でのインターンを通じ教育に興味を持ち、2023年に大学の研究室の仲間とClassroom Adventureを立ち上げる。




